先に結論
- 最初に出てくる希望予算は、たいてい根拠のない数字です。相場を見る前に決めているためです
- 必要な予算は、建物・土地・外構・諸費用を積み上げてはじめて出ます
- 借入できる上限は制度で決まっています。年収400万円以上なら返済が年収の35%まで(フラット35の基準)
- ただし上限は上限であって、目標ではありません
私は家づくりの相談窓口で、住宅アドバイザーを8年していました。お金の話で私が最初にすることは、いつも同じでした。希望の予算を聞いて、必要な予算を出して、その差を見せることです。
差が出ます。しかも、小さくありません。
希望予算は、何を根拠に出しているか
相談に来る方は、たいてい希望の予算を持っています。ただ、その数字の出どころを聞くと、はっきりしないことがほとんどです。
希望予算の出どころとして多いもの
- 今の家賃と同じくらいの返済額から逆算した
- 知人が建てた金額を聞いた
- 広告に出ていた価格を見た
- なんとなく、このくらいなら大丈夫だと思った
どれも、自分が建てたい家がいくらかかるかを調べる前に出た数字です。
必要予算は、積み上げでしか出ません

必要な予算は、希望から引き算しても出ません。次のものを足していきます。
必要予算の中身
- 建物の本体価格 … 建てたい広さと仕様で決まる
- 土地の価格 … 希望するエリアと広さの相場から置く
- 外構 … 駐車場、アプローチ、フェンス。忘れられやすい
- 諸費用 … 登記や火災保険、住宅ローンの手数料。引っ越しと家具も要ります
外構と諸費用が抜けたまま話が進むことがあります。建物と土地だけで予算を組むと、最後に足りなくなります。

建物の値段は調べたよ。土地も見てる。それで足りない?

外構と諸費用が残っています。この2つは、後から削りにくいんです。外構をなくすと家に入れませんし、諸費用は払わないと引き渡しが受けられません。
希望と必要の差は、数百万円になることがあります
積み上げた必要予算は、最初の希望予算を上回ることがほとんどでした。しかも、数十万円の話ではありません。数百万円の差がつくことも珍しくありません。
このとき、選択肢は2つです。
- 希望の金額に合わせて、家の広さや仕様を落とす
- 必要な金額で建てられるかを確かめる
どちらが正解かは、家庭によって違います。 大事なのは、差があると知らないまま話を進めないことです。差を知らずに契約まで進むと、あとから仕様を削ることになります。
借りられる額の上限は、制度で決まっています
必要予算が出たら、次は借入額です。上限は決まっています。
すべての借入れ※に関して、年収に占める年間合計返済額の割合(=総返済負担率)が次表の基準を満たす方
出典:住宅金融支援機構【フラット35】ご利用条件(2026年4月1日現在)
表の基準は、年収400万円未満なら30%以下、400万円以上なら35%以下です。
この「※」の中身も書かれています。フラット35以外の住宅ローン、自動車ローン、教育ローン、カードローン(キャッシング、分割払いやリボ払いを含む)などです。住宅ローンだけの割合ではありません。
この数字は「上限」です
返済負担率35%は、審査に通るかどうかの線です。無理なく返せる目安ではありません。
2025年度のフラット35利用者調査では、実際の利用者が返済に充てている割合は年収の23.3%(中央値)でした。上限とは10ポイント以上の開きがあります。
詳しくは「借りられる額」と「返せる額」は違うに書いています。
試算の金利を、低く置かない
借入可能額を出すときは、金利を決めて計算します。ここで低い金利を置くと、借りられる額が実際より大きく出ます。
私は、かつて1%で試算していました。今それをやると、現実と合いません。試算に使う金利は、いま借りられる金利を下回らないようにしてください。 金利は毎月変わるので、計算する時点の金利を確認します。
金利を0.5%低く置くとどうなるか
借入可能額は増えます。ただし増えるのは計算上の数字だけで、返済は実際の金利で行います。低い金利で出した上限まで借りると、返済額は想定を超えます。
ボーナス返済は、目的を決めてから
予算が足りないとき、ボーナス返済という方法があります。私は相談で、こう聞いていました。
「夏と冬にこのくらい入れれば足ります。どうしますか」
判断は、ご本人にしてもらっていました。決めるときの材料は2つです。
ボーナス返済を決める前に確かめること
- ボーナスが安定して出る見込みがあるか(業績で変わる会社は注意)
- ボーナスが減ったとき、毎月の返済で吸収できるか
毎月の返済を軽くするために使うのか、借入額を増やすために使うのかで、意味が変わります。 後者は、返済の総額が増えます。
年齢の話を、契約の前にしておく
40代で35年のローンを組む方は珍しくありません。そのとき私が確認していたのは、次のことです。
年齢に関わる確認
- 何歳まで働くつもりか
- 勤め先の再雇用の制度はどうなっているか(65歳以降も働けるか、収入はどう変わるか)
- 完済時の年齢はいくつか
制度の上限も決まっています。フラット35では、借入期間の上限は「80歳-申込時の年齢」と35年のうち短いほうです。申込時の年齢は満70歳未満であることが条件です。
申込時の年齢は1年未満を切り上げて数えるので、35年で組めるのは45歳ちょうどまでです。そして40代で35年を組むと、完済は75歳以降になります。40歳なら75歳、45歳なら80歳です。70歳まで働いたとしても、残りの5〜10年分は、年金や退職金、繰上返済で払う計画が要ります。 働ける年齢と再雇用の条件が分からない場合は、契約までに勤め先に確認してください。 契約のあとでは、返済期間を選び直せません。

団信や生命保険などの保障については、手厚いほうが安心だとお伝えすることはありました。ただ、具体的な商品を勧めることはしていません。 何が合うかは、家族構成とすでに入っている保険で変わるからです。
団信と生命保険の重なりについては、団信に入ったら、生命保険はいくら減らせるかに書いています。
予算を組む順番
まとめると、順番はこうなります。
予算を組み立てる順番
- 建てたい家の広さと仕様を決める
- 建物・土地・外構・諸費用を積み上げて、必要予算を出す
- 家計から、毎月いくらまで返済に回せるかを出す
- 3の金額と、必要予算に対する返済額を突き合わせる
- 差があるなら、仕様を落とすか、時期をずらすか、資金の出どころを探す
1と2を飛ばして「いくら借りられるか」から始めると、借りられる額が予算になります。 それは、返せる額とは別のものです。
まとめ
- 希望予算は、相場を見る前に出た数字であることが多い
- 必要予算は、建物・土地・外構・諸費用の積み上げで出す
- 希望と必要の差は、数百万円になることがある
- 借入の上限は、年収400万円以上で返済が年収の35%まで(フラット35の基準)
- 上限は審査の線であって、無理なく返せる額ではない
- 試算の金利を実際より低く置かない
- ボーナス返済は、減ったときに吸収できるかで判断する
- 40代以降は、何歳まで働けるかを契約の前に確認する
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出典
本記事は2026年9月28日時点の情報にもとづいています。借入の可否と条件は、金融機関の審査によって決まります。個別の判断は、金融機関の窓口または税理士などの専門家にご確認ください。
よくある質問
希望予算は、どうやって決めればいいですか?
先に希望額を決める必要はありません。建物、土地、外構、諸費用を積み上げて必要な金額を出し、そのうえで自分の家計から出せる額と突き合わせます。順番を逆にすると、あとから足りない費用が出てきます。
借入可能額まで借りてもいいですか?
借入可能額は審査に通る上限であって、無理なく返せる額ではありません。フラット35の2025年度利用者調査では、実際の利用者が返済に充てている割合は年収の23.3%(中央値)でした。基準の35%とは10ポイント以上の開きがあります。
ボーナス返済は使わないほうがいいですか?
一律に良い悪いは言えません。ボーナスが安定して出るか、減ったときに毎月の返済で吸収できるかで判断します。毎月の返済額を下げるために使うのか、借入額を増やすために使うのかで、意味も変わります。
40代で35年ローンは組めますか?
フラット35では、借入期間の上限は「80歳-申込時の年齢」と35年のうち短いほうです。申込時の年齢が満70歳未満であることも条件です。申込時の年齢は1年未満を切り上げて数えるため、35年で組めるのは45歳ちょうどまでで、それを過ぎると上限は35年より短くなります。40歳で35年なら完済は75歳なので、何歳まで働くか、再雇用の制度がどうなっているかを、契約までに確認しておいてください。



