結論(4行)
- 令和8年度税制改正による控除の引き上げは、令和8年11月までの給与・賞与の源泉徴収には一切反映されません
- 変更が生じるのは 令和8年12月の年末調整から。1年分の差額がここでまとめて精算されます
- だから「11月までの給料は何も変わらないのに、12月だけ手取りが増える」という体験になります
- ただし増え方は人によって大きく違います。基礎控除の増加は合計所得金額によって4万〜36万円で、2,350万円を超える人(給与だけなら年収2,545万円超)は増えません(詳しくは後述)
「基礎控除が引き上げられて、178万円まで税金がかからなくなった」というニュースを見て、 自分の給与明細を確かめた人もいるでしょう。何も変わっていなくても、それは確認不足でも間違いでもありません。
実際に何も変わっていないからです。この記事では、なぜ12月だけ急に手取りが増えて見えるのかを、 国税庁の原文で確認します。
国税庁がそう明記している
年収の壁は178万円へで見たとおり、令和8年度税制改正では基礎控除・給与所得控除が 引き上げられました。この改正の適用時期について、国税庁は次のように説明しています。
これらの改正は、原則として、令和8年12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税について適用されます。
このため、令和8年12月に行う年末調整など、令和8年12月以後の源泉徴収事務に変更が生じます。
(令和8年11月までの源泉徴収事務に変更は生じません。)
出典:国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」
読み方はシンプルです。
この一文が言っていること
- 令和8年1月〜11月の給与・賞与:源泉徴収は、年初から使っている令和8年分の源泉徴収税額表のまま。今回の改正による変更はない
- 令和8年12月の年末調整:ここで初めて、新しい(引き上げ後の)控除額を使って1年分を計算し直す
なぜ「まとめて」になるのか
毎月の給与から天引きされる源泉徴収税額は、その月の給与だけを見て、簡易的な税額表に当てはめて計算 されています。1年分の所得や控除を正確に反映しているわけではありません。
正確な金額を計算し直すのが、年末に行う年末調整です。年末調整では、1年間の給与総額と、 その年に実際に適用される控除額を使って、本来納めるべき税額を計算し直します。そして、 毎月天引きされてきた金額との差額を、12月の給与(または賞与)で精算します。
通常の年末調整でも起きていること
これは今回の改正に限った話ではありません。年の途中で控除額が変わる(子どもが生まれた、 保険料控除が増えたなど)と、毎年12月にこの精算が起きています。今回は日本全国の給与所得者に 同時に、しかもまとまった金額で起きる、というだけです。
今回の改正では、令和8年1月〜11月の毎月の源泉徴収が引き上げ前の(低い)控除額を前提に計算 されたままです。つまり、本来より少し多めに税金を天引きされ続けてきたことになります。 その「多めに払いすぎていた分」が、12月の年末調整で一気に戻ってくる。これが「12月だけ手取りが増える」 正体です。
国税庁の資料には、毎月の給与から天引きする際に使う「源泉徴収税額表」そのものについても 明記があります。
基礎控除額の引上げ及び給与所得控除の最低保障額の引上げに伴い、令和9年分以後の
「源泉徴収税額表」が改正されました。
つまり、毎月の天引き計算に使う税額表が新しくなるのは令和9年分からです。令和8年分は、 1年間を通して改正前の(年初から使っている)税額表のまま運用されます。差額は、12月の年末調整でまとめて精算する設計です。
どのくらい増えるのか(目安)
増える金額は、引き上げられた控除額 × 自分の税率でおおよそ見積もれます。
控除の増加額は年収によって変わります。比べるのは、今回の改正がなかった場合の令和8年分の控除額と、 改正後の令和8年分の控除額です。国税庁の「改正のあらまし」には、この2つが並べて載っています。
前提
- 給与収入だけの人。年収の区切りは、国税庁の資料に括弧書きで載っている「収入が給与だけの場合の収入金額」
- 基礎控除は、改正前の令和8年分も本則58万円に特例の加算がある額でした(合計所得132万円以下は95万円、132万円超336万円以下は88万円、336万円超489万円以下は68万円、489万円超655万円以下は63万円、655万円超は58万円)。改正後はそれぞれ104万円・104万円・104万円・67万円・62万円です
- 給与所得控除の最低保障額は65万円から74万円(本則69万円+特例5万円)になりました。増えるのは年収190万円以下なら9万円、190万円超220万円未満はそれより少なく、220万円以上は増えません
| 年収(給与だけの場合) | 基礎控除の増加 | 給与所得控除の増加 |
|---|---|---|
| 206万円以下 | 9万円(95万→104万円) | 190万円以下は9万円、190万円超は9万円より少ない |
| 206万円超 475万1,999円以下 | 16万円(88万→104万円) | 220万円未満は少し増える、220万円以上は0円 |
| 475万1,999円超 665万5,556円以下 | 36万円(68万→104万円) | 0円 |
| 665万5,556円超 2,545万円以下 | 4万円(63万→67万円、または58万→62万円) | 0円 |
| 2,545万円超 | 0円 | 0円 |
控除が増えた分に、自分の税率を掛けると、戻る税額のおおよその規模が分かります。
| 控除の増加額 | 所得税率5% | 10% | 20% |
|---|---|---|---|
| 4万円(年収665万円台〜2,545万円) | 約2,000円 | 約4,000円 | 約8,000円 |
| 16万円(年収220万〜475万円台) | 約8,000円 | 約1万6,000円 | 約3万2,000円 |
| 18万円(年収190万円以下:9万円+9万円) | 約9,000円 | 約1万8,000円 | 約3万6,000円 |
| 36万円(年収475万〜665万円台) | 約1万8,000円 | 約3万6,000円 | 約7万2,000円 |
この表の位置づけ
復興特別所得税(2.1%)は含めていません。もともとの所得税が少ない人は、戻る額はその税額までです。 社会保険料控除など他の控除が年の途中で変わった人、賞与の額が例年と違う人も、この目安どおりにはなりません。 正確な金額は12月の給与明細(年末調整の結果)で確認してください。 この表は「だいたいこれくらいの規模の話をしている」 という感覚をつかむための、私の試算です。
増えない人・逆に減る人もいる
年末調整は「1年分をまとめて計算し直す」仕組みなので、次のような人は今回の増加が目立たない、 あるいは当てはまらないことがあります。
- 合計所得金額が655万円を超える人(給与だけなら年収850万円超) — 特例の加算はなく、本則が58万円から62万円に上がる4万円だけ。2,350万円を超える人(年収2,545万円超)は基礎控除の増加がない
- 年の途中で年収や扶養状況が大きく変わった人 — 年末調整の結果は増加要因・減少要因の合算になる
- 住宅ローン控除など他の控除がある人 — 控除の組み合わせで結果が変わる
「みんな一律にいくら増える」という単純な話ではないことは、あらかじめ知っておいてください。
住民税は別の話です
12月の年末調整でまとめて精算されるのは 所得税だけ です。住民税は前年の所得をもとに計算され、 翌年度に別途課税される仕組みです。12月の精算の対象ではありません。「12月に住民税も一緒に 戻ってくる」と考えると、実際の給与明細と食い違って見えます。住民税の基礎控除は所得税とは別の額で、 今回の引き上げの対象になっていません。一方、給与所得控除の最低保障額74万円への引き上げと、扶養親族の 所得要件62万円以下は、令和9年度分の住民税(令和8年の所得にかかり、令和9年6月ごろから納める分)から反映されます。
まとめ
- 令和8年11月までの源泉徴収は変わらない(国税庁が明記)
- 変更は12月の年末調整から。1年分の差額がここでまとめて精算される
- 増加額の目安は「控除の増加額 × 自分の税率」。控除の増加は年収によって0円〜36万円程度(年収475万〜665万円台がいちばん大きい)
- これは臨時収入ではなく、納めすぎていた税金が戻ってきているだけ
- 12月に精算されるのは所得税だけ。住民税は、給与所得控除などの引き上げが令和9年度分から反映される
- 合計所得金額655万円超の人は増加が4万円だけ、2,350万円超の人は基礎控除の増加がない
12月の給与明細を見て金額が増えていても、慌てて使い道を決める前に、まず「年末調整の結果」であることを 確認してください。
関連記事
出典
- 国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」
- 国税庁「令和8年4月源泉所得税の改正のあらまし」
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱」一 個人所得課税
- 八尾市「令和9年度から適用される主な税制改正等」(個人住民税)
本記事は2026年9月6日時点で公表されている内容に基づいています。試算はあくまで目安であり、実際の金額は勤務先の年末調整の結果で確認してください。個別の判断は所轄の税務署にご確認ください。
よくある質問
令和8年11月の給与ですでに手取りが増えている場合、これは今回の改正と関係ありますか?
関係ない可能性が高いです。国税庁は「令和8年11月までの源泉徴収事務に変更は生じません」と明記しています。11月以前に手取りが増えているなら、賞与や昇給など別の理由です。
12月の年末調整で必ず税金が戻ってきますか?
多くの人は還付になりますが、全員ではありません。年の途中で年収が大きく増えた人、扶養親族の人数が変わった人などは、逆に徴収になる場合もあります。目安は増えた分の控除額に自分の税率を掛けた額です。
12月の給与明細のどこを見ればいいですか?
「年末調整過不足額」または「差引支給額」の欄です。多くの企業では12月の給与または賞与にまとめて反映されます。金額の内訳が知りたい場合は、勤務先の給与担当者に確認してください。
手取りが増えた分を先に使ってしまっても大丈夫ですか?
これは臨時収入ではなく、1年間かけて納めすぎていた税金が戻ってきているだけです。使い道を決める前に、年末調整の結果が「還付」なのか「本来のペース」なのかを一度確認することをおすすめします。



