年末調整で前職の源泉徴収票がない・出さないとどうなる|転職した年

年末調整で前職の源泉徴収票がない・出さないとどうなる|転職した年のイメージ税金と控除

先に結論

  • 転職した年の年末調整には前の会社の源泉徴収票が要る。年末まで勤めていれば、前の会社の給与も合わせて今の勤務先で計算するため(前の会社に扶養控除等申告書を出して受けた給与の場合)
  • 出さない・間に合わないと、今の会社は確認できるまで年末調整を見合わせる。確認できないままなら年末調整はなく、自分で確定申告をする
  • もらえないときは前の会社に頼む(退職後1か月以内に渡すことになっている)。それでも渡されなければ税務署に不交付の届出を出せる
  • 途中退職して年末まで再就職しなければ、原則として年末調整はない。納め過ぎの税金は確定申告で戻せる(翌年から5年間)
  • 家族がいなければ扶養控除等申告書の家族の欄は空欄でよい。会社を移るあいだに自分で払った国民年金・国民健康保険は保険料控除申告書に書く

この記事はフィクションです

登場する鳥と、その家族構成・収入・やりとりはすべて創作です。実在の人物・団体とは関係ありません。
ただし、制度の内容と数字は、記事末尾の出典にある公的機関の資料にもとづいています。物語は制度を分かりやすくするための器で、判断のもとになるのは出典のほうです。

登場人物

おこげ シナモン文鳥。26歳・会社員。去年、転職した。ひとり暮らし。難しい話はすぐ忘れるが、分からないことを素直に聞けて、誰からも好かれる。(運営者が昔飼っていた文鳥がモデル)
あられ セキセイインコ。32歳・会社員。共働きで1歳の子どもがいる。去年、育休から復帰した。お金の話は「損はしたくないが、調べる時間がない」
こがらし ジュウシマツ。41歳・会社員。子どもは小4と小1。家を建てるかどうかを考えている
ふぶき オカメインコ。58歳・会社員。80代の親がいる。自分の年金も、そろそろ気になっている

解説役のしぐれ(桜文鳥)と、質問役のみぞれ(白文鳥)は、これまでの記事と同じです。

十月の終わり、封筒が配られた

おこげが転職した年の、十月の終わりのことです。

経理の担当者が、課の机に封筒を配っていった。「年末調整の書類です。十一月の第二金曜までに」

おこげの封筒にだけ、付箋が貼ってあった。「途中入社の方は、前の会社の源泉徴収票も一緒に」

中には、入社の日に書いた扶養控除等申告書と、白紙の申告書が二枚。扶養控除等申告書には「制度が変わったので、内容を確かめて返してください」とメモがあった。

おこげは三枚を並べてしばらく眺め、隣の席に声をかけた。

「こがらしさん。これ、ひとつも分からないです」

同じ課の先輩のこがらしが、椅子ごと振り向いた。

「前の会社では、去年の内容が印字された紙に名前を書くだけで。おれ、中身をちゃんと見たことがなかったんです」

こがらしは、少しうれしそうだった。「そう言えるのは強いよ。分かったふりで出すと、あとで困るから」

封筒の中身

  • 扶養控除等(異動)申告書 … 家族のことを書く。入社の日に出したもの
  • 基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 … … 自分の1年分の所得の見積もり
  • 保険料控除申告書 … 生命保険・社会保険料・iDeCoなど
  • 前の会社の源泉徴収票 … 転職した年だけ求められる

「扶養する人がいないのに、扶養控除の紙?」

扶養控除等申告書で埋まっているのは、名前と住所とマイナンバーだけだった。「源泉控除対象配偶者」「源泉控除対象親族」の欄は空いている。

「これ、書き忘れですよね」 「おこげくん、結婚してる? 養ってる家族は?」 「どっちもいないです」 「じゃあ、たぶん空欄で合ってる。ぼくのは子どもの名前で埋まってるけどね」

こがらしの「たぶん」を確かめます。「源泉控除対象配偶者」は、生計を一にする配偶者のうち、所得の見積額が一定額以下の人を書く欄です。「源泉控除対象親族」は、扶養している16歳以上の親族などを書く欄です。当てはまる人がいなければ、どちらも空欄です。

ただし、申告書そのものは出します。

国内において給与の支給を受ける居住者は、源泉控除対象配偶者や扶養親族の有無にかかわらず原則としてこの申告を行わなければなりません。

出典:国税庁「A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」

家族がいない人の申告書は、空欄の多い紙で正しいということです。一人暮らしで世帯主が自分なら、世帯主の欄は自分の名前、続柄は「本人」です。国税庁の記載例も、本人が世帯主の場合は続柄を「本人」としています。

メモの「制度が変わった」は、扶養親族の所得の上限が令和8年分から62万円以下に上がったことを指しています。施行は令和8年12月1日で、新しく扶養に入れられる家族がいる人は出し直します。おこげはそのまま返せば済みます。 詳しくは扶養控除等申告書の書き方に書いています。

転職した年の年末調整に、前職の源泉徴収票が要る理由

「前の会社の紙が、なんで今の会社に要るんですか」 「今年の分を、合わせて計算し直すんじゃなかったかな」

これは合っています。

ほかの会社などに「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出して支払を受けた給与がある人については、それらの給与を含めて年末調整を行う必要があります。

出典:国税庁 タックスアンサー No.2674「中途就職者の年末調整」

所得税は、1月から12月までの1年分で決まります。毎月引かれる税金は、1年分を合計しても本来の税額と一致しないのが通常です。そこで年末に計算し直します。そのためには、前の会社で「いくらもらい、いくら引かれたか」が要ります。

それが書いてあるのが源泉徴収票です。使うのは支払金額・源泉徴収税額・社会保険料等の金額の3つです。前の会社の社会保険料まで合わせて集計することは、国税庁の「令和8年分 年末調整のしかた」に書かれています。

前職の源泉徴収票を出さないと、どうなるか

おこげは少し黙ってから聞いた。「前の給料、今の会社に知られるんですよね。……出さないって、ありですか」

「それは、ぼくも知らないな」

この確認ができないときには、年末調整を行うことはできず、その人が確定申告により所得税及び復興特別所得税(令和9年分以後は所得税、防衛特別所得税および復興特別所得税)の精算を行うことになります。

出典:同 No.2674

出さないこともできます。そのかわり、今の会社では年末調整が行われず、自分で確定申告をします。

令和8年分は、精算を受けないと改正が反映されない

令和8年は基礎控除などが上がりましたが、11月までの給与の税金は改正前のままです。引き上げの分は、12月1日以後の年末調整でまとめて精算されます。国税庁の改正Q&Aは、この年末調整で改正後の控除が適用された人は確定申告が要らないとしています。年末調整を受けなければ、改正後の控除は確定申告で受けることになります。

国税庁は、払いすぎ(過納額)が生じる場合のひとつとして、次も挙げています。

年の中途で就職した人など1年を通じて勤務していない人について年末調整を行った場合

出典:国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」

逆に出す場合は、今の会社が作る源泉徴収票の摘要欄に、前の会社の名前や給与の額が載ります。 国税庁の法定調書の手引が、そう記載するよう案内しているからです。知られたくない気持ちと、自分で申告する手間。比べて選べるのは本人だけです。

「じゃあ、出します」とおこげは言った。「確定申告のほうが、もっと分からないので」

こがらしは笑わなかった。「それも、ちゃんとした理由だよ」

開けていなかった封筒

「辞めるとき、何かもらわなかった?」 「……たぶん、もらいました。封筒で」

その夜、おこげは靴箱の上の郵便物の山から、前の会社の封筒を掘り出した。退職した翌月に届いて、開けていなかったものだ。

翌朝、おこげは源泉徴収票をこがらしに見せた。「上のほう、半分くらい空欄なんです。印刷ミスですか」

印刷ミスではありません。 「給与所得控除後の金額」と「所得控除の額の合計額」は、年末調整をした人だけに書く欄です(国税庁の法定調書の手引)。年の途中で辞めた人は、前の会社で年末調整を受けていないので空欄になります。各欄の見方は源泉徴収票の見方に書いています。

見つからないとき

  • 前の会社は、退職の日以後1か月以内に源泉徴収票を渡すことになっている
  • 電子データで渡されていることもある。求めれば紙でも渡してもらえる
  • なくしたときは、前の会社に再発行を頼む
  • 求めても渡されないときは、税務署に「源泉徴収票不交付の届出」を出せる。ただし再発行には使えない

前職の源泉徴収票がもらえない・間に合わないとき

おこげの封筒は見つかりました。見つからない、まだ届かない、という人のために、今の会社がどう扱うかを書いておきます。

国税庁の「令和8年分 年末調整のしかた」は、年の途中で再就職した人について、会社に次のように指示しています。

その確認ができるまではその人の年末調整は見合わせてください。

出典:国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」(36頁「年の中途で再就職した人の取扱い」)

「その確認」は、前の会社の給与と、そこから引かれた税金を源泉徴収票などで確かめることです。今の会社の給与だけで先に年末調整を済ませる、という扱いにはなっていません。 確認できないまま終われば、前の節のとおり年末調整は行われず、自分で確定申告をします。

間に合いそうにないときにすること

  • 今の会社の担当者に、遅れることを先に伝える。 社内の締切は会社ごとに違う
  • 前の会社の人事・総務に交付を頼む。 退職の日以後1か月以内に渡すことになっている
  • 求めても渡されないときは、税務署に「源泉徴収票不交付の届出」を出せる
  • 年末調整が行われなかったときは、確定申告で精算する

出さなくてよい人もいます。国税庁の No.2674 は、まず「その年中に」ほかの会社などから給与を受けたかどうかを確かめるとしています。前の年に退職して、今年の1月以後は今の会社からしか給与を受けていない人もいます。この場合は合わせて計算する前職の給与がないので、今年の年末調整に前職の源泉徴収票は要りません。

もうひとつ、合わせて計算するのは、前の会社に扶養控除等申告書を出して受けた給与です(No.2674)。掛け持ちのアルバイト先などで、この申告書を出さずに受けた給与があるときは、今の会社の担当者か税務署に扱いを確かめてください。

会社と会社のあいだの、ひと月

次は保険料控除申告書だった。

「生命保険は?」 「分からないです。学生のとき、母が何か入れてくれた気がします」

電話で聞くと、保険はあった。払っていたのは母だった。この場合、おこげの申告書には書きません。 国税庁の「年末調整のしかた」は、生命保険料控除の注意事項に「本人自身が支払ったものであるかどうか」を挙げています。

iDeCoにも入っていないので、その欄も空欄でいい。そこで、おこげがふと手を止めた。

「そういえば四月は、どこの会社にもいなかったんです。国民年金と国民健康保険に入って、自分で払いました」

これは、今の会社が知らないお金です。 給与から引かれた社会保険料と違って、本人が直接払った保険料は、保険料控除申告書に書いた金額で控除されます。「社会保険料控除」の欄です。

国民年金の保険料及び国民年金基金の掛金については、保険料等を支払ったことを証明する書類が必要ですが、それ以外の保険料等については必要はありません。

出典:国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」

国民年金の控除証明書は、日本年金機構から届きます。令和8年分は、1月から9月に納付した人へ、10月下旬から11月上旬に郵送される予定です(電子データで受け取る設定の人には、郵送はありません)。まだ届いていなくても、翌年1月末日までに出すことを条件に、控除して年末調整をしてよいことになっています。

その夜、郵便受けのチラシの束に、日本年金機構からの郵便が一通まぎれていた。

基礎控除申告書の「見積額」

最後の一枚で、おこげはまた手を止めた。「年収って、今の会社の分だけでいいですか」 「前の会社の分は?」 「あ」

基礎控除申告書に書くのは、その年1年分の所得の見積額です。国税庁の記載例も、給与の収入金額は「給与を2か所以上から受けている場合には、その合計額」を書くよう案内しています。令和8年分の基礎控除は合計所得金額で変わり、489万円以下なら104万円です。前の会社の分を抜くと、区分を取り違えることがあります。

一方で、控除が月割りになることはありません。 国税庁は4月に就職した人を例に、基礎控除などは「その控除の全額が認められます」としています。書き方は基礎控除申告書・配偶者控除等申告書の書き方にまとめています。

締め切りの前の日

十一月の第二木曜日、おこげは封筒を経理の担当者に渡した。申告書が三枚と、前の会社の源泉徴収票、国民年金の控除証明書。

「そろってますね。助かります」

おこげは自販機で缶コーヒーを二本買って、一本をこがらしの机に置いた。

「聞かれたから、ぼくも調べ直せたよ」と、こがらしは言った。

この日の結論(転職した年の年末調整)

  1. 前の会社の源泉徴収票を探す。 電子データで届いていないかも見る
  2. 扶養控除等申告書は、家族がいなければ空欄が多くて正しい
  3. 自分で払った国民年金・国民健康保険を、保険料控除申告書に書く
  4. 基礎控除申告書の見積額に、前の会社の給与も入れる

途中退職した年の年末調整は、どこで受けるか

おこげは同じ年に再就職したので、今の会社で前の会社の分も合わせて年末調整を受けました。辞めた側から見ると、次のように分かれます。

退職したあと年末調整税金の精算
同じ年に再就職し、年末まで勤める新しい勤務先で、前の勤務先の給与も含めて受ける納め過ぎ・不足があれば年末調整で精算される
年末まで再就職しない原則として受けない翌年に確定申告(還付申告)

退職した会社では、原則として年末調整は行われません。国税庁の No.2665 は、年の途中で行う年末調整の対象を限って挙げています。たとえば12月の給与を受けた後に退職した人です。パートタイマーなどで本年中の給与が136万円以下で、年内にほかから給与を受ける見込みのない人も対象です。

再就職しないまま年を越すと、毎月引かれた税金が納め過ぎになっている場合があります。国税庁の No.1910 によると、この分は退職した年の翌年1月1日から5年間、確定申告(還付申告)で戻すことができます。手順は退職した年の確定申告に書いています。

この記事の鳥:シナモン文鳥(おこげ)

文鳥は、インドネシアのジャワ島やバリ島が原産の小鳥で、日本では江戸時代から飼われてきました。シナモン文鳥はその色変わりの品種で、頭は濃いめの茶色、体は淡いベージュです。性格には個体差がありますが、文鳥はひなから育てると人によく慣れる鳥として知られます。寿命は7〜8年ほどと言われ、10年を超えて生きる鳥もいます。

この物語では、分からないことを分からないと言える役を、この鳥にあてています。

みぞれ
みぞれ

転職した年だけ、出すものがひとつ増えるんだね。

しぐれ
しぐれ

増えるのは一枚です。けれど、その一枚がないと、年末調整そのものが止まります。

退職のときにもらった封筒は、開けて中を確かめておいてください。

鳥たちの話(連作)

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出典

登場する鳥の設定と、そのやりとりはすべて創作です。本記事は2026年10月13日時点で公表されている内容に基づいています。国民年金の控除証明書の送付時期は、日本年金機構が2026年9月24日に公表した令和8年分の予定です。個別の判断は勤務先の担当者または所轄の税務署にご確認ください。

よくある質問

転職した年の年末調整で、前の会社の源泉徴収票は出さないといけませんか?

前の会社に扶養控除等申告書を出して受け取った給与があるなら、今の勤務先はその給与も含めて年末調整をします。金額は源泉徴収票などで確認するため、確認できないと年末調整は行えず、本人が確定申告で精算することになります。

前の会社の源泉徴収票をなくしました。どうすればいいですか?

前の勤務先に再発行を頼んでください。中途退職の場合、源泉徴収票の交付期限は退職後1か月です。求めても交付されないときは税務署に「源泉徴収票不交付の届出」を出せますが、すでに交付されたものの再発行はこの手続きの対象外です。

前職の源泉徴収票が年末調整に間に合いません。どうなりますか?

今の勤務先は、前職の給与と税額を源泉徴収票などで確認できるまで、その人の年末調整を見合わせます。社内の締切に遅れそうなら担当者に伝え、前の勤務先に交付を頼んでください。最後まで確認できなければ年末調整は行われず、本人が確定申告で精算します。

年の途中で退職して、年末まで再就職しませんでした。年末調整はどうなりますか?

原則として年末調整は受けられません(12月の給与を受けた後に退職した人などは例外です)。税金が納め過ぎになっている場合があり、翌年1月1日から5年間、確定申告(還付申告)で戻すことができます。

独身で扶養する家族もいません。扶養控除等申告書は出さなくていいですか?

出します。国税庁は、給与の支給を受ける居住者は源泉控除対象配偶者や扶養親族の有無にかかわらず、原則としてこの申告をしなければならないとしています。家族の欄は空欄のままで構いません。

退職してから次の会社に入るまでに払った国民年金は、どこに書きますか?

保険料控除申告書の社会保険料控除の欄です。国民年金の保険料は支払いを証明する書類を添えます。国民健康保険の保険料は証明書類が要りません。